【武藤敬司引退試合】最後の対戦相手は内藤哲也ではなかった【最後の決まり手は!?】

2023年2月21日武藤敬司引退

希代のプロレスラー、武藤敬司選手の引退試合が東京ドームで行われました。興行主催はNOAHで、ABEMA TVでのPPV(Pay-per-view:試合観戦にコイン購入が必要)での観戦も可能となっておりました。この日は業界の盟主、新日本プロレスからの参戦も多く、他にも武藤敬司選手が過去に社長を勤めていた全日本プロレス、DRAGONGATEからも選手が参戦しておりました。東京ドームでの興行という事もありマッチメイクはとても豪華です。反面、自前の選手だけでは東京ドームを埋める事は厳しいという側面も垣間見えます。

私はABEMA TVでの観戦となりました。このような興行をオンタイムで場所を問わずに観戦できるのは、良い時代になったと常々思います。

注目の対戦カード

生粋の新日本プロレスファンの私としては注目カードは以下の3試合でした。

  • 高橋ヒロム vs AMAKUSA
  • オカダカズチカ vs 清宮海斗
  • 武藤敬司 vs 内藤哲也

NOAHとDRAGONGATE、全日本の対抗戦もファンにとっては良い試合だったと思います。メインイベントまでの前座であり、あまり事件的なものは起こさずしっかり進行していた印象でした。こういうところでやってやろう、みたいな事を考えるレスラーはあまりいないのでしょうね。しっかり企業ガバナンスができているという事でもあります。

高橋ヒロム vs AMAKUSA

一般世間の認知度、期待度はあまりわからないが、現役IWGPのJr.チャンピオンとGHC Jr.チャンピオンのシングル対決である。普通に考えたら、ありえない夢のカードだと古いファンは考えるのだが、後述のオカダカズチカvs清宮海斗があるせいでカードとしては霞んでしまっている。もったいないが豪華なカードである事は違いない。AMAKUSA選手が予想以上に小柄であったが、飛び技にオリジナリティがあって良い選手なんだと理解。試合冒頭に飛び出した旋回式のトペ・スイシーダは新鮮であった。途中、変形のラ・マヒストラルで抑え込んだ時は3カウントを高橋ヒロム選手が奪われるかと焦り、やはり会場もどよめいていた。最後は高橋ヒロム選手がしっかりとタイムボマーを決めて勝利。この後のヘビー級チャンピオン対決もあるので、星を邪推するファンとしてはオカダカズチカが大金星を譲る可能性もあるかと不安(と期待)が込み上げてくる展開に。個人的には試合前のインタビューで「海外遠征の際にメジャー団体の新日本プロレス所属であることから他の選手から邪険にされる中、AMAKUSA選手(に似た選手?)だけからは優しく接してもらえた」みたいなエピソードが出てきたのが心揺さぶられた。高橋ヒロム選手はひょうひょうとしているのだが、こういう発言をするところがやはり憎めないキャラクターなのだろう。

オカダカズチカ vs 清宮海斗

前の試合がJr.頂上決戦で、こちらは本当に団体の顔同士の戦いである。(私の中の)前評判は圧倒的にオカダカズチカの圧勝。そもそも試合が組まれるかどうかというのが争点であった試合である。試合の副題?が「Shining Through」であり、オカダカズチカが華麗にスルーするのではないかと考えていたが、しっかりと試合は行われる事に。この辺は1月の新日本プロレスの興行にNOAHの選手が大量に参戦している事の”お返し”だろう。武藤敬司選手が伝説になった1995年の新日本vsUWFインターナショナルの団体対抗戦とは違い、最近の団体対抗戦はしっかりお互いの利益になるように会社同士が考えている。プロレスコンテンツを浪費しないために必要な事である。個人的には2000年代新日本プロレス暗黒期はスター選手不在に加え、NOAHに貸しを多く作っている事で重要な試合での星のやりくりが不利になり、ファン流出を起こしている事が遠い原因となっていると考えているが、誰も言及していない(格闘技ブームが新日本プロレス暗黒期を招いたという事が主流になっているが、同時期NOAHは東京ドームを埋めるなど興行的にも黄金期を迎えている)。それほど、新日本プロレスの会社の危機を故三沢光晴選手に救ってもらった恩義があるのだろう。一方で業界の盟主になろうとNOAHは各団体をつなぐプロレス連盟を立ち上げようとして挫折している。

話はそれたが、そのようなNOAH>新日本になっていた時代もありつつ、有名な新日本プロレスのV字復活により現在は新日本プロレスの一強時代である。NOAH所属の選手はその時代を味わっているベテラン選手も多く、発言の節々からは当時の事を意識している事が感じられる。間違いなく、新日本プロレスのV字復活の立役者は棚橋弘至ではあるが、本当に黄金期を到来させてくれたのはオカダカズチカである事は間違いない。現在はオカダカズチカを中心にプロレス界は動いており、新日本プロレス社長が「オカダカズチカ5億円プロジェクト」を公言しているようにここから、オカダカズチカを筆頭にプロレスというジャンルをもう一度メジャーにしようとしている。

そんなオカダカズチカは常に追われる身の選手である。会社の猛プッシュを受けながらもその期待に全て応え業界のナンバーワンになっている選手。その選手を倒す事ができれば、自分の名が上がると誰もが考えるだろう。新日本プロレスでは昔からその風潮があり、社長である故アントニオ猪木選手は除き、藤波辰巳、長州力、藤原喜明、前田日明などは反逆の歴史である。最近のプロレスラーはプロレス好きである事をあまり隠しておらず、誰が考えたかは不明だが今回の試合の伏線となった新日本プロレスでの視界外からの顔面蹴りも長州力と前田日明のオマージュと言われている。武藤敬司選手が試合前に「次のプロレス世代へつなげる」ような発言をしている事から、オカダカズチカを清宮海斗が倒す事で次の時代が到来してしまうのかともほんの少しだけ不安になっていた。

オカダカズチカが清宮海斗をしっかりと力の差を見せつけた後で勝ってほしい、ただそう思っていました。

最近のオカダカズチカは故アントニオ猪木を意識した入場コスチューム、タイツを履いており、自分が業界の盟主、顔である事を自覚していると思われる。武藤敬司選手は引退試合であるため、試合内容としては、この試合が今回の興行の目玉である。

試合が終わればオカダカズチカは「相手を光らせた上で勝つ」という猪木イズムそのものの戦い方で素晴らしい勝ちっぷりであった。試合早々、オカダカズチカのレインメーカーポーズが飛び出しすぐに試合が終わるかと思えば、清宮海斗の怒涛の攻め、レインメーカーがなかなか決まらずオカダカズチカが間違いなく苦境に立たされる展開。上記の事を思いながら観戦していた事もあり、本当にオカダカズチカが負けたらどうしてくれると思いながら観戦していましたが、納得の結果でありました。

武藤敬司 vs 内藤哲也

本日のメインイベントである。武藤敬司の引退試合であるが、数日前に肉離れを起こしたという情報もありこれもまた不安でした。試合が成立しなければいけないため、内藤哲也選手もかなりのプレッシャーがかかってそうです。

入場

武藤敬司選手と同時デビュー戦を行った蝶野正洋選手が入場。お決まりのnWoクラッシュで入場。黒い杖?(木刀)のようなものを手に解説席に座ります。皆、満身創痍です。

内藤哲也選手から入場。いつもはもっと待たせた上で会場に現れる印象もありますが、本日はすっと現れました。

さて武藤敬司選手の入場。流れてくるのは過去の入場局の出だしをアレンジした曲。チャンピオン鷹、THE FINAL COUNTDOWN、HOLD OUT、TRIUMPH、nWo TRIUMPH、OUTBREAK、TRANS MAGIC、SYMBOLとテーマ曲は移り変わります。さて本当に入場してくるのはどの曲かと待っていると、、、

HOLD OUTでした!!

これで最後という意味で一番良い選曲なのでしょう。個人的には高田延彦戦のTRIUMPHが圧倒的に印象的ですが、一番若く動けていた武藤敬司選手の時代という事もあり良かったと思います。

試合開始

さて試合が始まると、ロックアップからグラウンドへ。解説席でも言われていましたが、膝が不安視される中ではグラウンドの攻防は安心して見ていられます。グラウンドでは内藤哲也をコントロールしてやはり武藤敬司選手が優位に立っています。自然な流れでキーロックを使う武藤選手。キーロックも武藤選手が愛用していた技の一つです。自然な流れでヒールホールド、これも後の足攻めへの布石となります。その後はフライングメイヤーからのフラッシングエルボー。この時に武藤選手の右頬が少しカットしてしまい出血しています。

その後は内藤選手のペース、場外へ投げ出されますが、サードロープの下を通って場外へ。この時、それくらい足のコンディションが悪いのだと理解しました。花道での攻防中、武藤選手の息が上がっており、内藤ペースになります。

内藤はレッグシザースによる腕~肩~首攻めに移行します。個人的には足攻撃はやはり行わないんだなと邪推。極められている最中に武藤コールが上がり、ロープブレイク後も内藤は技を解かない。これにブーイングが起きますが、こういうところはさすが内藤選手、時間の使い方など試合の進め方に長けています。武藤選手はペースを乱され、なかなか起き上がれない。このまま試合がしぼんでいくのではないかと危惧しました。場外で続けて内藤は足攻めを開始。

武藤選手を場内へ投げ入れた後、武藤選手が息を吹き返し低空ドロップキック、ドラゴンスクリュー、足四の字固めのフルコース。たまらず内藤選手も悶えますが、冷静に再びレッグシザースホールドで攻めます。起き上がっても武藤選手はあまり動けず。内藤選手が腰をかがめる武藤選手を小突いて嘲笑う。

しかし、ここで武藤敬司選手が行ったのは袈裟斬りチョップ!!ひるんだ内藤選手に対してDDT!その後は躊躇いもなく、エメラルド・フロウジョンを敢行!事前VTRでも語っていましたが、ここで飛び出すとは思いませんでしたが、さすが武藤敬司。

続けてシャイニング・ウィザードを行うもカウント2。正直、決め手に欠ける状況になってしまった。こうなったら、全盛期であればすぐにムーンサルトプレスを行うところ。武藤選手は当時のままシュミット式バックブリーカーを行うと会場はどよめきが。迷わず、コーナーポストに駆け上がる武藤選手。ムーンサルトプレスをやってしまうと、もう二度と歩けなくなると言われている。過去にラストムーンサルトプレス興行もわざわざやっている訳で、やるわけないと思いつつ、やったらどうしようという不安。コーナーポスト上で悟り、やめる武藤選手、賢明です。

その後、雪崩式フランケンシュタイナーを狙うも不発。ドラゴンスクリューから再び足四の字固め。これも十分なフィニッシュホールドです。何とかロープに逃げる内藤選手。足のダメージが蓄積した上で立ち上がる内藤選手にシャイニングウイザード3連発。これもカウント2で返されると、万策尽きた武藤選手。再び、シュミット式バックブリーカーからのセカンドロープへ駆け上がる武藤選手。本当にまたムーンサルトやろうとしていると思ったが、やはり思いとどまる武藤選手に内藤選手がカットして失敗。内藤選手は逆にドラゴンスクリューをかけ、そのまま足4の字固め。ただでされ足に爆弾を抱えている武藤選手には致命傷になる足四の字。正直、このまま試合が終わると思いましたがロープブレイク。

内藤選手は逆にシャイニングウイザード2連発。もはや武藤選手は動けない状態です。武藤選手を起き上がらせてデスティーノを決めてそのまま3カウント。試合終了となりました。

試合終了後

内藤選手をロープを開けて場外へ誘導する武藤選手。最後は武藤選手のマイクパフォーマンスで締めるのだろう。

何を話し始めたかと思ったら

「まだ体力も残っているし、灰にもなっていないんだよな。。。」

「蝶野!俺と戦え!」

武藤敬司 vs 蝶野正洋

試合前にデビュー戦と同じ相手とやってみたいと語っていた武藤敬司選手。今回ゲスト席に座って解説をしていた蝶野選手は本当に聞いていなかった様で、あんぐり。

レフェリーはVIP席に来ていたタイガー服部を指名!蝶野選手は実況を辻よしなりさんに依頼!

そして流れるDYNAMIC CITY!まさにデビュー戦の再現となるのでしょうか。

蝶野選手も嫌々ながらもリングに上がり、リングに上がってからはやはりプロレスラー、エンジンがかかります。

ロックアップから試合は始まり、蝶野の特異な顔面かきむしり。からの蝶野のシャイニングケンカキック。倒れた武藤選手にSTFをかける蝶野選手。フルコースです。すかさずタップをする武藤選手、試合終了です。みんな笑顔。

本当の引退試合はデビュー戦の相手の蝶野正洋選手となりました。ちなみにデビュー戦は逆エビ固めで武藤選手が勝っていたと記憶。当時は二人とも痛くてやめたくてすごく大変で山本小鉄さんか誰かに戦えってずっと吠えられていたと語っていましたね。

やはり武藤敬司は試合後もひょうひょうとしており、明るく終わった気がしました。棚橋弘至選手は泣いてしまっていましたが、思い入れがやはり違うのでしょう。

試合後のインタビューで歩きながら試合内容を自然と反省してしまっているとも語っていました。「もう試合やらないのにね」と笑って話す武藤敬司。やはりあなたはプロレスを愛し、プロレスに愛された男だったと思う。

ありがとう武藤敬司

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